スーパーとJ2
本来なら早めに起きて、新国立美術館で開催されている日展を観に行く予定でしたが、眠たかったのと、雨が降っていたのとで結局行くのはやめて部屋の片付けと、昨日買った金属用のこぎりでボルトを切断したり、洗濯機を回したりして過ごす。
夜。Kから誘い出しを受けて新宿の沖縄料理店で飲む。
そこで、マンションを購入した経緯をさんざん尋問されるが、のらりくらりとかわす。ただ、安心して居座り続けることが出来る場所が欲しかっただけである。
「いいなぁ、いいなぁ。」などとKは呟くので、「だったら買えば良いじゃないか?それなりの家賃を払い続けていたのなら、買えない事も無いだろう?」と訊いてみたら、どうやら彼は、今彼が住む都内某所に強いこだわりがあるらしく、その土地で中古のマンションとなると、安いものでも2,000万円台からしか無いのだと言う。
「だったら、収入を上げていくことを考えるしか無いよね。」
「それって、転職とかしろってこと?」
「それも選択肢の一つかもしれないけど、今いる組織において、収入を上げる方法って何がある?」
「そうだねぇ、今はある穀物を扱っているんだけど、その売り上げを伸ばすことかな?」
「じゃあ、その穀物の売り上げを伸ばすにはどうすればいいと思う?」
「販売チャネルを増やすとか、オファーをしてみるといったことかな?」
「じゃあ、それをやってみたら?」
「でも、製粉会社とか、他の会社とのしがらみがあるしなぁ…」
「もしそれが無かったら?」
「穀物の色々な活用方法を提案するね。」
また、彼の親の話にもなる。
彼の父親はかつて、地域最大級のスーパーを数十店舗経営していたのだが、数年前そのスーパーが産業再生機構入りしてしまい、社長の座を追われてしまったのだが、今また再び立ち上がり、潰れかかった小さなスーパーを立て直す再建請負人として再び数店舗のマネジメントをしているという。
どうやらKは実家に戻るたびに父親に、もどって一緒に働こうと言われているらしいのだが、Kにしてみれば今はフットボールが一番大事らしく、休日にフットボールが出来なくなる可能性があることが更に実家を遠ざける理由になっているのだと言う。
「何だよ、だったら戻ってやれよ。プロ目指すんじゃあるまいし、スーパー経営しながらでもフットボールは出来るだろ?」
「そうだけどさぁ、オレは今、フットボール仲間に恵まれているから、彼等のもとを去りたくないと言うのがあるんだよね。今の仕事だったら、休日にフットボールが出来るしね。」
「・・・・・・。」
「マンション買いたいといっておきながらそれは無いだろう。それに、フットボール仲間がお前に飯を食わせてくれるのか?マンションを買ってくれるのか? スーパーで何ぼでも稼いで、そのカネで都内に新築マンションなりJ2あたりのクラブでも買えばいいだろ…。」と言いかけたが、言うのはやめた。ここで色々言ったところで右から左に受け流されるだけだし、こう言った事は自分自身で気付くしか方法が無いからだ。もし平方さんが彼の立場なら、スーパー経営とフットボールとの接点を探すけどね。おそらくそこまでの発想は無いのだろう。
その一方で、自分のこととなるとなかなか気付かないものだから厄介なんだよねぇ…。本当に見なければいけないものは、他の人には簡単に見えるが、自分自身で見える人は平方さんを含め、そうそういない。困ったものだ。