帰り道。ヨドバシカメラに寄る事にする。
目的は2つ。一つはSDカードやメモリースティックを差し込むことが出来るPCカードを購入するのと、昨年9月16日に現像に出した写真をようやく取りに行くことにしたのだ。
店を出て、駅の近くのベッカーズの中に入りアイスティを頼んで封筒から写真を取り出す。
確か現像に出したのは『写ルンです』2つ。よって写真と共に戻って来たのはAPS(アドバンスト・フォト・システム)フィルムとインデックスプリントである。デジカメ全盛の今となっては『アドバンスト(先進的な)』という言葉もちょっと虚しい気もするが、1枚1枚確認するように写真に目を通してみる。
まず目に飛び込んできたのはO畑さんの姿だ。
確かO畑さんと知り合ったのは約6年位前。当時平方さんが勤めていた会社の名古屋の取引先の人で、平方さんの会社で扱っていた、とある画期的な商品に魅力を感じた取引先の社長が、そのノウハウを学ばせる為に送り込んだ一つ年上の女性で、彼女のお目付け役として一時期仕事の上で行動を共にしていたのだ。平方さんはO畑さんの当座の住まいを探し、自分の持っているものをなるべく多く教え、彼女もそれを水を吸い込む砂のように色々と覚えていった。
同時に、東京にやって来るなりイケメンの男を見つけて夜な夜なセックスしていることや、好きな体位はXXX(自粛)であると言う事など、普通であればドン引く内容の話をあっけらかんとする女性であった事を思い出した。
しかし、時々会社にやって来る取引先のN社長の話す事業計画は、雲を掴むような話であり、かつ、地球上に食品衛生法や著作権法などといった法律が無いものと前提にしたかのようなものであることに疑問を持った平方さんは、正直言って腹の中ではどんなものか思いながらじっとN社長や彼女といったこの取引先の面子を眺めていたが、ある時、O畑さんがこんなカミングアウトをして来た。
「平方さん、私ね、キャバクラで働いとるんよ。」
O畑さんはそう言いながら錦(名古屋の名駅と栄の間にある歓楽街)のキャバクラの名刺を平方さんに手渡す。名刺にある「リサ」という名前はおそらく源氏名だろう。
「へっ!?」平方さんは一瞬耳を疑った。「何で?この仕事の給料だけじゃ生活できないの?」
「実はね、私給料貰っていないんだ。」
「!!」
呆然とする平方さんに対し、彼女は話を続ける。
「実はね、社長のNのことなんだけど…。あの男、私や他の人たちに『お前たち、金持ちになりたいか?だったらオレの会社に投資して、目に付けた商品をどんどん売ってどんどん稼ごう!!』なんて声を掛けて、消費者金融が何社も入っているビルで一日に何社も契約しては限度額いっぱいまでお金を借りさせて、そのお金を自分の懐に集めては、色んな事に使っているみたいなんだよね。」
「色んな事って?」
「会社の運転資金とか、接待とかに。」
「何それ?それって社員から金巻き上げて、自分のために使っているだけじゃないか?」
「今はそうかも知れないけど、儲かったときは投資した分だけ皆で按分するからって…。」
「リターンの無いリスクなんて取る必要の無いリスクじゃないか。大体、社員に給料も払わないでタダ働きさせた挙句に、街金でつませたのかあの男は!!」
「兎に角悪い事は言わない。今のうちにこの仕事から足を洗う事だ。いや、こんなの仕事じゃないな。もし返せる見通しがあるなら返す為に他のところでも、キャバクラでも働いて返す、そうでなかったら個人再生手続なり債務整理なり自己破産なりをしなきゃ、大変な事になるぞ。」
彼女は、「そうだよね。やっぱり平方さんもそう思うよね。」と、何かを自分で確かめるように言っていたが、結局最後までどういう風に解決を図ったのか知る事は無かったんだっけ…。
そしてO畑さんは、「イケメンの彼氏がいる。」と言っていた割には、仕事が終わってから、向こうから食事に誘ったり、都内のスポットに連れて行って欲しいなどと言っては平方さんに『引率』させていた事も思い出す。「彼氏がいるのであれば、彼氏に連れて行って貰えばいいんじゃない?」と訊いてみたら、案の定「ほら、彼はイケメンなのと、XXX(自粛)がスゴイだけから…。」という答えが返って来たことも思い出した。
それから数ヵ月後、O畑さんはN社長のもとを離れ、四国にいる新しい別の彼氏のもとに逃げるように去って行った事を風の噂で聞いたが、少なくとも、平方さんは彼女自身が幸せであって欲しいとただただ願ってやまない。
ちなみに言っておきますけど、この人とは『ラヴ・アフェアー』的なことは全くありませんので誤解なされぬよう。