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結果発表

 19時過ぎ。平方さんは大きな荷物と共に東京都庁にやって来た。海賊の格好や、魚の被り物をした男たちに導かれ、一旦エレベーターで45階まで一気に上がってから受付裏を経由して階段で44階に下がり、控え室へ。既に部屋の中にはアラブの石油王やメーテル達がスタンバイをしている。平方さんもネクタイを緩め、シャツを脱ぎ、大きな荷物の中からコスチュームを取り出し、それらを身に纏う。更に洗面に移動し、眉毛やヒゲを描き、赤ら顔になっていく。「いやぁ平方さん、慣れたもんですねぇ。」後ろから声が聞こえてくる。

 「中途半端に恥ずかしがるのが一番ダメですから。」
 平方さんはおでこに「にく」と書きながら答える。

 我々の出番は全7組中6番目とのこと。その間、平方さん改め鬼瓦権蔵(?)は梅垣義明(?)やマギー審司(?)、倖田來未(男)と共に流れの打ち合わせをしたり、影から他の出場者のパフォーマンスを覗いたりしている。残念ながら彼らの生業はあくまで会社員であり、その筋のプロフェッショナルではないので、予想通り「笑っていいとも」の年末特番のモノマネ以上のグダグダ感満載である。これはパフォーマンスをした人が悪いのではない。悪いのは思い付きでこの企画を考えた人だ。
 やがて我々の出番となる。立食パーティーの人垣を縫うように、越路吹雪の「ろくでなし」をBGMに、先頭の梅垣義明(?)は鼻にピーナッツを挟んでは遠くに飛ばし続け、鬼瓦権蔵(?)は変な顔をしながら腰を少し落としつつステージへと向かっていく。
 正直言って、その間何をしていたかはハッキリとは覚えていない。覚えている事と言えば、誰かが鬼瓦権蔵に向かって「違和感な~い!」と言っていた事と、笑いが少ない様に感じたのでどんどんボケようと思い、倖田來未(男)のおっぱいを揉んでみたところ、「余計な事しないで下さい。」と小声で怒られた瞬間、自分の心の中の何かが崩れ落ちていく様な感覚が襲って来たことだ。

鬼瓦権蔵

 44階に戻り、鬼瓦権蔵から平方さんに戻り、再び45階へ上がる。ふと気が付けば、平方さんは抽選会で盛り上がる他の誰からも距離を置き、窓際の一人がけのソファに腰を下ろし、何を食べることも飲むこともなく、眼下に広がる東京の夜景を何も考えず見つめている。別にあんな格好をするのが厭だった訳ではない。問題は、それが自分の利益になるかならないかという事だ。そんな思いが頭に浮かんで来る。
自分はどうありたいのか?これは自己実現の為の1ステップなのか?思えば随分遠回りをしてしまったものだ。もはや平方さんには遠回りしている時間はもう無い。
 ふと気が付けば、平方さんはとしぼうに電話を掛け、オフコースの『言葉にできない』を歌っていた。

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