二死二塁
ピッチャーの投げた球は時速90マイルでバッターの内角低めに落ちていく。キャッチャーは捕球するや否やピッチャーに劣らぬスピードでセカンドベースに向かってボールを投げる。一方僕はバッテリーの動きなど目もくれず、セカンドベースに向かって全速力で走り続ける。ベースカバーに入るセカンドベースマンが僕の視界に入った瞬間僕は空を舞い、思い切り手を伸ばし、頭からランディングを試みる。セカンドベースマンはキャッチャーからのボールをグラブに収まった状態で僕の背中にタッチさせる。
僕は両手両足を伸ばしたままの状態で僕の右手にいるアンパイアを見る。見たいような、見たくないような…。さぁ、どっちだ?
アンパイアは両腕を左右に広げるたと同時に、全身の力が少し抜ける。理由は良く分からないが、どうやらセーフらしい。
僕は無事セカンドベースに辿り着けたことにちょっとした喜びを感じると同時に、今度はどうやってサードベースに行こうか?という問題にぶつかった。実際のところ、僕は今日の今日までセカンドベースに辿り着いたことが無く、それはサードベースへのスティールも未体験であることを意味する。
嘗て、スティールで名を馳せた名選手は『セカンドベースへのスティールより、サードベースへのスティールの方が簡単だ。』と言っていたが、本当だろうか?一番良いのは、バッターがロングヒットなりホームランなりを打ってくれるのが一番良いのだが、現実はそんなに甘くは無い。点が欲しければ自らの手で取りに行く位の気持ちが無いとゲームに勝つ事が出来ないからだ。もういい加減僕はゲームに勝ちたいのだ。
ここから先はどうなるか僕自身にも分からない。でも、僕はバッターボックスに立っているのが右打ちであることをいいことに、敢えて大きくリードを取る。セカンドベースには誰もベースカバーに入っていない上に、サードベースマンもシフトを前進させている。。相手にしてみれば、既に2アウトなので目の前のバッターさえ抑えればランナーなどどんなに僕が走ろうと、恐れるに足りないからだ。そうか。あの名選手が言っていたのはこういうことなのか!
僕は再びサードベースに向かって走り始めた。前よりも確かな気持ちを持って。